クラウドファンディングを使った伝説的なマスク詐欺
Breeze: the cooling face mask with gold and silver filters by Artech — Kickstarter
まぁ何はともあれ、このページのコメント欄を見てください。
もう金返せ!!金返せ!!のオンパレードです。
事のあらまし
このマスクプロジェクトが立ち上がったのは、2020/07/10 です。コロナ禍で世界的にマスクが不足する中、人々はマスクを求めて右往左往していました。
そんな中、この Breeze Mask プロジェクトが発足します。
キャンペーンを見ると、金・銀のN95フィルターを自由に交換でき、かつ通気性に優れムレにくい。それでいて、声はフィルターを通して伝わりやすくなるような加工が施されている。更にマスク特有の耳の裏側が痛くならない工夫がされていたりフィルターは水洗い可能と、運動や旅行においてとても良い商品のように見えました。しかも Super Early Bird で39ドル。当時、マスクは高騰し100枚入りの不織布が1万円(88ドル)を超える事もありました。
それならば、洗って使えて環境に優しいこのマスクのコンセプトはとても良いものだと思います。
雲行きが怪しくなる
当初の予定では、2020/10から11月に BACKER に対して発送予定でした。10月には住所を確定して欲しいというメールが届いていました。この当時には、発送する意思があったのだと思います。
そして11月。この辺りからおかしな状況が発生しました。
未だ発送されず、BACKER からはどうしたのか?という問い合わせが始まります。プロジェクトからは「できるだけ早く出荷できるように生産を急いでおり、現在も順調に進んでおります。」という通知をしつつ、当初の計画にないゴーグルを作り始めました。
勿論 BACKER は激怒します。こんなゴーグルは望んでない!早く、マスクを出荷しろ!といい始めました。
更に機能に問題があると言い出し始める
2020/12/24 既に発送予定から2ヶ月の遅れが生じていました。
誰も必要としていない、ゴーグルを取り付ける為にアタッチメントの作成が3ヶ月掛かるよ!という通知がされました。もはや BACKER は大激怒です。この頃から、Refund (返金) しろというコメントが大量に発生するようになります。
それは当然の事で、当初の目的から大きく外れているからに他なりません。
車を購入したら「車を保護するカーポートを作ってるよ。だから車のデザインも変えるね!」と言われたようなものです。意味が判りません。
2021/3/8 生産を再開したと宣う
更に3ヶ月が経過しました。その間、マスクに関しての情報はほとんどアップデートされませんでした。しかもこの頃になると、市場にマスクは補充され始めて、価格がどんどんと落ち始めました。それでもまだ、このマスクには金・銀のフィルターがあるから…という理由で優位性があったように思います。
ちなみに、生産遅れの理由は「コロナで移動制限がついたせいで各国から移動ができず生産ができなかった」のだそうです。「当社のインダストリアル・エンジニアはヨーロッパに、デザイナーはアメリカに、試作品や製造のパートナーは中国全土にいます。アメリカ、ヨーロッパ、中国の各州間の移動が完全に禁止されていることは、予想できませんでした。」とありますが、これは殆ど嘘だったと思われます。雑に言えば、デザインはともかく生産は全て中国製だったので、各国を移動する必要が無いからです。
2021/6/1 更にいらない機能をつけて生産を遅らせる
ゴーグルがスモーク化しました。誰もこんなものを望んではいません。
ついでに言うと、この2021/6/1に彼らはこう言いました。
「応援してくださっている皆様に、素晴らしいお知らせがあります。2週間以内にブリーズ製品の配送を開始いたします。」
だそうです。
そう考えると7月中には到着しそうですね。元々のプロダクトデザインは見る影もないですが、発送はされるようです。同月、6/27に発送を開始したよという通達がありました。
これが送られるモノだそうです。
……あれ? と思われた方はとても鋭い感性をお持ちです。
そう、金と銀のフィルターは影も形もなくなりました。「95 filters」という謎の紙フィルターに変わっています。N95と言っている訳では無いし認証を取ったという記録も無いので、「95 filters」という謎の名前のフィルターを作成しただけです。
「マスクにはユニバーサルフィルターポケットがあり、2枚のフィルターが付属しています。お好みのサイズのフィルター、またはオリジナルのブリーズ95フィルターを使用することができます。このフィルターは、N95/FFP2フィルターと同じ層を含み、さらに保護のための活性炭層が追加されています。」
と書いてあったので、自称N95という中華特有の詐欺ですね。
2021/9/19 連絡が途絶える
クリエイターからの通知は9月から全く発信されなくなりました。
コメントはもはや「金返せ!」「詐欺野郎!」「被害者の会を作ろう」「BACKER NUMBER ***** だけどいつ届くのか?」のオンパレード。
プロジェクトから1年。放置されまくったプロジェクトは見事に失敗し、唯一の勝利者は $525,711 を獲得した Artech という人物だけになりました。
2021/11/09 突然荷物が届く
もはや詐欺だと思い、クレジットカード会社に詐欺行為で通報しておいたのですが、11/09に突然中国から荷物が届きました。
epacket で届いた荷物がコレ。
XIONGWEN WEN
16 Qixin Road Baiyun District Baiyun
District Guangzhou GUANGDONG 510000
CHINA
Phone: +86 1892 894 3683
これが送り主です。
検索してみると…
Xiong Wen – Shop Cheap Xiong Wen from China Xiong Wen Suppliers at Mi Mi Store on Aliexpress.com
Mi Mi Store という、Xiaomi の偽物のようなブランド名で商品を販売していますね。
1pc Mask Dust With 10 Filters Mask Half Face Reusable Activated Carbon Dustproof Respirator Facemask Hiking Cycling Masks Cover
おやぁ? Breezeマスクとほぼ同じデザインのマスクを販売していますねー。608円(5ドル)でフィルター10枚付き。なるほどー、ここに依頼して詐欺マスクを作ってもらったようですね。
開封
これに、8千円(70ドル)も支払った自分に怒りを覚えますが、それはさておき。
ちなみに袋に書いてある、breeze-mask.com はアクセスしても何もありません(笑)
さっきの5ドルのマスクと何が違うのか、全く判りませんね。95 Breeze と書いてあるフィルターが1枚だけ付属しています。このマスクを入れる為の袋(右の黒い袋)は、100円均一でも捨てられるレベルのペラペラで酷いものでした。
中華特有の雑な作り
プラスチックにバリが大量についています。型取りもまともにできない工場が作ったものです。高性能とは程遠いですね。しかも新品にも関わらず傷だらけです。
ここはフィルターを通して声が通過する所ですが、まともに取り付けされていません。隙間が空いているのでフィルターの意味が無いのです。そして、この写真で見ても判りますが、プラスチックが傷だらけなのです。
マスク本体は…
これがマスク本体。とりあえず臭いが酷いのでまともにつける事ができません。
そして、見れば判りますが裁縫の精度がゴミです。Breezeのロゴの近くに、黒い糸くずが見えますね。
マスクを開いた所。この左上にも黒い糸くずが出ています。日本でこのレベルの納品をしたら、即日取引中止になるでしょう。そのレベルで酷い出来です。
ちょうど頬に当たる所がまともに縫い付けされていません。しばらく使ったら、ここから剥がれていく事は想像に難くありませんね。素人が作ってももっとまともなモノができると思います。
ここが鼻のフィルター部分。…あれ? ゴーグルを取り付けする為のアタッチメントは?
全然形違いますよね。この設計だとアタッチメントは取り付けできません。
そして、このアタッチメントの取り付けが……ネジ……( ´Д`)=3
もう雑すぎて何とも言えません。洗って使えるのが目的じゃなかったのか。ネジなんぞつけたらそこから錆が発生したり、壊れやすくなるのが判らないのか。もはやアホすぎてコメントすらできません。
1枚5円(3cent)程度のフィルター。どう見てもN95同等品とは思えません。
結論
ふざけんな中華詐欺業者!!!!
とりあえず、kickstarter や Indiegogo でこれ以上の詐欺に合わないように警告します。至急このプロジェクトは停止し、全ての BACKER に返金した方が良いと思います。kickstarter は詐欺の片棒を担ぐ業者です、と宣伝するようなものです。
いくら kickstarter が投資の世界であるとは言え、プロジェクト内容をコロコロと変えて詐欺をする行為は認められないと思います。だからクラウドファンディングってとても胡散臭いイメージがつくんですよ。