コンテンツへスキップ
ホーム » Ar tonelico レビュー[ネタバレ有]

Ar tonelico レビュー[ネタバレ有]

  • Review

Ar tonelico(アルトネリコ) ~ 世界の終わりで詩い続ける少女 ~

このレビューには、大変なネタバレを含みます。現在プレイ中の方、またはこれからプレイするご予定の方は、このレビューを絶対に見ないでください。上記を承知された上で、このレビューを読んでいただければ幸いにございます。
また、このレビューは私の視点で見たものなので、すべての人が同じ感想を持つとは到底思えません。参考意見のひとつとして、読んでいただきますようお願い致します。また、このレビューは同じような物作りに関わる私の感想です。ある意味珍しい視点だと思いますので、クリア後に読んでいただければ、「ああ、そういえば・・・」と思ってくださるかも知れません。

まず、最初に感想の大前提を言いますと、「ひとつの物語として、大変に楽しめた作品」でした。自分の中では、今年度(あまりゲームをプレイしないけど)間違いなくナンバーワンだと思います。どのくらい集中してハマっていたかと言えば、クリア時点で43時間だったのですが実8日。つまり、一日当たり5時間強もプレイしていた計算になります。仕事を持って深夜近くに帰宅する身としては、ありえない程のプレイ時間です。そのくらいに物語の先を読みたい、と思えた作品でした。

それから、このゲームのために5.1chのスピーカー一式を揃えました。ハードオフで(苦笑) ゲームをするに辺り、音は無くてはならない存在だと私は考えています。無音も音のひとつという程、音に対する拘りは強いのです。結果として、このスピーカー導入は大成功だったのですが、ゲームひとつのためにそれらを買いたい!と思えるくらいにハマっていた・・・と、いう事を理解してもらえれば、どれ程気に入ったかという事がわかると思います。

まず、プレイをしていて非常に感じたのは、物語を読ませるための演出が心地よいと感じました。私の好きな作品で、英雄伝説III 「白き魔女」がありますが、これと非常に同じような印象を受けました。ちなみに余談として、この「白き魔女」とかなりの類似点があった事を見逃しませんでした。例えば、「Fin」の文字のところでオルゴールを利用した演出、これは使い古された手法といえばそうなのですが、「白き魔女」のそれとまったく同じです。(だからパクりだとか、そんな程度の低い話はどうでも良いです) 倒すべき敵にもしっかりとした理由があり、しかもそれは過去の人間がしでかした事という大前提も同じですね。「白き魔女」は詩うRPGという枕詞がついていたのをご存知でしょうか?

次は個別で評価していきます。

まず、シナリオについて。
流れは、敵が出現した!-> 何とかしよう -> 色々あって解決 という勧善懲悪の流れですが、基本的には「みんないい人」という前提になっていると思います。ボルドや司祭の様な利己主義の人間もいるにはいますが、所詮スパイスでしか無くやっぱりいい人達の話、という感じでした。しかしそれが嫌味では無く、綺麗に物語を印象つけている・・・というと格好つけすぎでしょうか。

が、物語で難点をつけるとすれば、やたらエロに振っているのが微妙といえば微妙でした。音楽の美しさが余計にその部分を目立たせている場面もあり、これは必要無いよなーと思う事もしばしばありました。コスモスフィアにダイブしている時もそんな感じでしたね。

それから、主人公のライナーがやたらバカな点。何といいますかツッコミどころ満載で「おい!それは無いだろ」と何度も思いました。この点が非常に残念で、物語の楽しむ上で障害となっているような気がしてなりません。それから、申し訳ないとは思いつつもいいます。声優さん、異常にヘタです。正直棒読みです・・・。ライナーのボイスはとことん飛ばしましたが、物語を楽しむ上で大きく阻害された事は否めません。特に親父(レアード)との会話では浮きまくりです。レアードが銀河万丈さんなので、比較対照としては可哀想かも知れませんが・・・・。

メインヒロイン二人は・・・まぁどちらもありだと思います。とにかくセンスがぶっこわれてるオリカに、とにかくラブラブ光線出しまくりなミシャ。対称的な性格の二人を出す事で、どちらを選んでも良いような作りになっています。正確にはもうひとり、とことんぶっこわれたレーヴァテイルが参戦してきますが、これは後述。

まず、オリカ。簡単に言うと、コンプレックスを持っている少女が少しずつ成長して心を開いていく・・・というシナリオです。実は三大女神の末裔という設定があったりしますが、あまり有効に使われません。後々で理由付けに使われているくらいでした。オリカがライナーを好きになっていく描写があんまり書かれていないのが残念でした。確かにどんな時でもオリカの事を信じるといったライナーに好意を持つのはわからなくも無いのですが、決定的にこのイベントで!という場面がありません。あえて言うとしたら飛空挺から落ちる時・・かも知れませんが、その辺りの描写が無かったため知らない間に好きになっている、という風に見えてしまいます。オリカが抱えているコンプレックスが解消し、前向きになっていくのはやっぱり嬉しく思いました。それから、どうでもいい小ネタとネーミングで笑わせてくれます。この辺りもポイントですね。

ミシャ。ミュールを封印するために詩い続ける少女。その呪縛から自由を求めていく・・・所謂使命を帯びたキャラというやつですね。これも残念ながら思った程、重要ではありませんでした。その使命から逃げたいという部分をもっと強調してもよかったと思います。それからライナー大好きっ娘ですが、何故ライナーが大好きになったのかわかりません。それからライナーがミシャの事を覚えていない理由もまったくありません。とにかくミシャが「覚えていないんだ・・・」と連発するので、ここに何か壮大なテーマが!!と思ったら、本気でライナーがバカだっただけの様でした。ここをもっとつっこんで書いてくれたら、ミシャに対する想いという部分を強く表現できたのではないか・・・と残念でなりません。ちなみに、知り合い曰く「ミシャは胸の小さいチビミシャがいいんだ!どうして胸がでかるなるんだ!許せない!」と強調していましたが、自分にとってはどうでも良い事です。

シュレリア様。このキャラだけは様付けする事が義務付けされています。誰が何と言おうと様付けです。このキャラは前半と後半で物凄いというか、絶対嘘だろ!?という程のギャップがあるのです。そのギャップのせいで私は・・・いや、何でもありません。第三のレーヴァテイル、シュレリア様。前半までは、その威厳と奇妙な見た目のせいで物語にどう絡むのか楽しみにしていたのですが・・・まさかこんな絡み方をするとは思いませんでした。パラメータを見ると「16歳」と書いてあったりするので、確信犯だと思います。1?16歳なのに・・・。特にスタンダード衣装で戦闘をすると、もはや犯罪と思える程の愛くるしさをかもし出します。正直狙いすぎです。卑怯です。犯罪です。・・・取り乱しました。

物語としてはかなり重要なポジションにあり、ヒロイン二人のルートでは解明しきれなかった謎が、塔の管理者という事で明らかにされていきます。が、そんな中にも萌え要素を多量に含んでおり、シュレリア様ルートをやらない事にはアルトネリコは語れない、と言っても過言では無いと思います。特にコスモスフィアのはっちゃけっぷりは異常だと思いました。汚いよなーと思いつつ、その次を期待させる話の展開?は見事だと思います。

ジャック、女ったらしだけど相手にされていないというありがちなキャラですが、このキャラも消化不足でした。 イムフェーナからの離脱は単純に相反する考え方のみだったのでしょうか? せっかくの渋めのキャラなのに、その設定をうまく生かしきれていないと思います。オリカの護衛もいまいち弱いですね。確固とした理由があって動いているように見えないのは終始残念だったと思います。もっとキャラをうまく生かしてやれば、面白かったのになと思います。もっとリルラと絡んだ話が欲しかったですね。ちなみに、このリルカ。グラスノ結晶をあげるとアイテムを拾ってきますが、ロクなアイテムを拾ってきません。 S級グラスノを渡しても、(確か)みゅギモとか拾ってきた時には殺意を覚えました。

クルシェ、このキャラも消化不良ですね。ルークとのエピソードはまったく語られていないので、アルトネリコ2への布石なのかな?と勘ぐりたくなるくらいです。ちなみに設定上だと、女らしい格好は苦手だが、実は密かに憧れているとありましたが、この設定が使われる事はありませんでした・・・。猫飴好きも語られていませんねぇ・・・。夢はブラストライン越えですが、今回の事件で達成してしまったクルシェ。ラストはジャックとどこに行くつもりなのでしょうか。・・・というか、この二人のエピソードもまったくありませんでした。ユーザーを置いてけぼりにする超展開はいかがなものかと思います。

ラードルフ。影が薄いです。いい人なのも責任感が強いのもわかるのですが、エピソードがひとつもない上に突飛した設定も無いので、いるのかいないのかわからない程の印象です。その上、オリカには散々な印象を持たれていたり、武器を強化しても攻撃力が並外れて弱いので使えないキャラになっていると思います。私はDPを貯めるため、多用させていただきました。盾としてはかなり使えるキャラだったと思います。

絢胤(アヤタネ)。えーと、ロリコンです。このキャラ、もっといじって欲しかったと残念でなりません。ネタバレokなのでさっさと書いてしまいますが、ミュールより生み出されたプログラムなのに・・・行動が一貫していません。ライナーに諭されるのが早過ぎます。物語を追っていくと[ライナー+シュレリア様]と[ミュール]を天秤に掛けて、[ライナー+シュレリア様]を取ったと思えて仕方ありません。特にアヤタネは序盤に消えてしまうキャラ&途中で意味深に出てくるだけなので、アヤタネとライナーの関係が殆ど書かれていません。それなのに、「プログラムである僕を普通に接してくれたライナー」と言われてもポカーンという感じでした。ライナーのバカウイルスがアヤタネにも移ったのか?と思った程です。もっとこの関係をうまく書いて欲しかったなぁと思いました。キャラとしては非常に良い味を持っているだけに残念でした。

クレア、おそらくかなりの人が「第三のレーヴァテイルはこいつだ!」と思って予想を外された人だと思います。ちなみに、そこに除外された人は「第三のレーヴァテイルは亜耶乃だ!」と思ったに違いありません。クレアは歌が秀逸でした。

どんすけ・波摩、ツンデレ二人組。

タスティエーラ。シュレリア様が機能停止し、「これで本当によかったのか?」という選択肢まで出してフェイズ3を作らせたのに対して、このお方が消えてしまうのはあっさりとスルーされる可哀想な人。幸せに消えていくのはいいのかよライナー!!と激しいツッコミをした事は今だに忘れません。正直、一番のババを引いたのはこの人では無いかと思うのであります。

次、音楽について。
場面場面に応じて、非常に完成度の高い音楽が場面を盛り上げてくれました。エンディング、オープニング、挿入歌ともに素晴らしい曲だと思います。残念だったのは、5.1chが(恐らく)歌のみだった事でしょうか。効果音も5.1chでやってくれたら・・・と思いました。個人的に一番の完成度だなと思ったのは、vsミュールですね。相当気合入れて作っているのがわかりましたし、否応無く盛り上がる事ができました。逆にそれに引き換え、序盤の戦闘の曲は個人的に許せません。何ですか?あのラップ部分。あれを聞くたびに盛り下がりました。数ある良い曲の中で、あれだけが唯一雰囲気ぶち壊しでした。あの曲の差し替え版が売られたら、そのためだけに買ってもいいと思うくらいです。(戦闘やたら多いですし)

戦闘システムについて
悪く言うと、ヴァルキリープロファイルの劣化版です。戦闘システム自体は解り易いので、それ自体に不満は無いのですが、ヒロインズとソリが合わないと厳しいかも知れません。ヒロインを護りながら戦うのですから。それから、カウンター時の「PRESS **** BUTTON」の文字。あれ、いらなくありませんか?ボタンを押すのはわかってるし、デザイン的にごちゃごちゃしていて汚いと思いました。

他の不満点と言えば、DPが一度に9999までしか貯まらない点。例えば、シュレリア様がすべてのパラメータをMAXにするのに70万以上のポイントが必要になります。最大ダメージ99999/最大詩魔法999999%でDPが最大9999。もう一桁ずつ上げて欲しいと思いました。

後、わかりにくいのがアンビエンスフィールドとハーモニクスゲージ、あとクリスタル。クリスタルは正直いらないと思います。アンビエンスフィールドは詩魔法のダメージアップ、ハーモニクスゲージは詩魔法の増加速度アップ・・・なのですが、これが後半になるとうざったい。DPを稼ぐには、ハーモニクスゲージを上げて、打つ少し前にアンビエンスフィールドをLv3にして・・・とやるわけですが、これが作業になってしまい戦闘がつまらなくなります。

それから後半になればなるほど、敵が弱過ぎてしまい詩魔法に頼る必要がほぼ0になってしまいます。このへんはバランスの取り方がよくなかったのか、自分がキャラのLvを上げすぎたのかはわかりません。ただ、ミュールのようなボスでもアイテムを使わず、「???」でも唱えていれば、前衛だけで倒せてしまうのはやり応えがまったくありませんでした。フェイズ2あたりからその兆候が出始めていたので、キャラと敵の強さのバランスはもっと取ってもよかったと思います。

実は、この辺りが劣化版と言った理由です。戦闘が段々と作業になっていく、しかもかなり早い段階で・・・は、RPGとして致命的です。それから後半になるとお金が足りなくなります。相当足りないのですが、戦闘で得られるお金はしょぼ過ぎました。また、倒したはずの敵が表示上は残ったままになっていたり、詩魔法のカスが画面に残ったりと、バグもそこそこあります。詩魔法のエフェクトがショボイというのは禁句かも知れません。(ムービーの画質も低かったですし)

AVGパートについて。
会話シーンやレーヴァテイルとの会話シーンの部分ですが、物凄い手抜きだと思います。まず、バグや表示上これはおかしいと思う部分がやたら多かったです。例えば、「自信」が「自身」になってたり、オリカのコスモスフィアでドラゴンを反転させて表示させるシーンがありますが、ドラゴンの影が背景の光と逆になっていたり、ドラゴンの左足が切れて表示されていたりしています。

これだけならまだ許せるのですが、曲をころころと変えすぎ!というポイントも多数あります。元はシリアスだけど会話がギャグっぽいからここはそれ系の曲で、それが終わったら元に戻して・・・を頻繁にやっています。これ、エロゲなんかだと素人スクリプタがよくやるのですが、ちょっとしたギャグシーンなら場の雰囲気を考慮してあえてシリアスな曲のままにします。そうしないと曲の落ち着きの無さで、せっかくのシーンが壊れたりします。

他にも効果音の作り方が非常に適当だったりしています。走り去る時の足音はそれを象徴する例ですね。オリカだろうとシュレリア様だろうと、ミシャだろうと走り去る時の足音は一緒。某エロゲですら足音のレパートリーを4種類、状況と足の速度に合わせて4種類、計16パターンを用意していたりします。曲にはこだわるが、音にはこだわらないのはどうかと思いました。

CGについて
別段凄いわけでも無くという感じだと思います。地上マップの画面は、PS1?と思う程しょぼかったのは秘密です。それから、塔内部はどこを歩いているのかわかりにくかったり、ここはジャンプでいけるの?というのが解らない場所がありました。キャラCGも取り立てて凄いわけではありません。

演出について
物凄く光る演出もあれば、何考えるの?と思う箇所もありました。その中でも一番許せなかったのは、ラストシーンのところで「みんなにも詩を紡いでもらおうよ!」となり行動するところです。

なんで敵がでてくんのよ!!

天文台のメイメイや鐘の・・・妹?にも紡いでもらおうと思って行ったら、敵がうじゃうじゃと出る。雰囲気ぶち壊し。もうエンディングなんだから物語の結末を楽しませてよ!と思いました。他にも、曲がぶつって切れたり、細かな配慮がされていないゲームという印象です。プレイヤーがその場面を見てどう感じるか、というよりこういう演出を考えたから見て!という方が強いと思います。そうじゃないと、上のようなエピソード中に敵と遭遇なんてバカな事はしないと思います。まるで、エンディングの最後に曲をぶつっと切った「こみっくパーティー(PC)」のようです。自分にも開発手伝わせて!と心底思いました。

バグについて
上記もさる事ながら、このゲームは非常にバグが多いですね。私が確認しただけでも最低5は存在します。致命的だったのは、ミシャのコスモスフィアで「Y」を取ったのですが、装備からは選べずカーソルだけ何も無いところに移動し、そのままゲームがハングアップしてしまった事です。セーブもしていなかったので、痛い目に合いました。
他にも、ボルドの研究室の前で衛兵がガードしている場所。社長に許可を取って話しかけると、「お通りください」と一旦退いた後に、何故か衛兵が元の場所に戻ってきました。そのせいで先に進めず困った事がありました。(一度街に戻ってから再度行ってみると開いていました)
グラスメルクで作ったアイテムが消えるバグもありますし、シェアリングコアを作ったのにストーリーが進まない事もありました。曲がならない、止まった箇所も2つ程ありましたし、会話の整合性が取れていない部分もありますね。開発が推していたのかも知れませんが、一般的に売られているゲームとしてはバグの多さは相当だと思います。

と、色々書き連ねました。殆どがネガティブな意見でしたが、それ程この作品を気に入っているという事です。5.1chのスピーカーを買ってきたのはphase2の中盤なので、上の様な不満点はかなり見ていると思います。それでも、もっと楽しめるなら惜しくない!と思って買ってきたくらいなので、相当お気に入りなのは間違い無いと思います。世界観の構築は見事の一言ですし、そこに登場するキャラはどれも被る事なく生き生きとしています。そこに幻想的な曲が乗る事で、場面の雰囲気を際立たせていました。

人が幸せになるには、と模索した道の結果がすべての種族による共存。文章にするとこっ恥ずかしい事この上ないのですが、たまにはこんな気楽に遊べるストーリー重視のRPGも良いのでは無いでしょうか?

私が言うと稚拙かも知れませんが・・・心温まるストーリーをありがとうございました。次に紡ぐ詩を期待しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください