過走行車はATFを交換すべきなのか?

ネットやリアルでもよく見られるこの議論。ATFの交換。ディーラーは無交換を謳っていますし、交換は不要だ!いやいや交換すべきだ!と様々。過走行車は交換すると壊れるからやるな!という意見もあります。という訳で実際の所どうなのよ?と実験してみました。

まずは 138,432km のE87型BMWを用意しました。とは言え、13.8万kmも交換しなかった訳では無く、6万km位の時にディーラーでATFとストレーナーは交換しています。シフトアップにショックを感じたので新車保証で診て頂きATFとストレーナー、ECUのリセットを行ったと説明されました。ちなみに、今回の作業でストレーナーは交換されていなかったと判明し、また正規ディーラーに対する信用が失われました(笑) 過去何度も何度も何度も何度も何度もやらかしているのでとっくに見捨てたディーラーなのですが、ここに来てすらディーラーの酷い作業が見つかるとため息すら出ませんね。新車保証で修理しても儲かる訳では無いので、手を抜く所は手を抜きまくるというのはどこのディーラーでも聞く話です。

さて、話を戻すとそこからほぼ8万kmはATF無交換で走っている訳です。一般的には新車で買ってすら手放してもおかしくない過走行車ですね。8万km。しかも欧州車。一般的にこのレベルの過走行車になるとATF交換は断られます。特にディーラーでは絶対にやってくれません。理由は簡単で問題が起きる可能性が高いからです。ATは内部が複雑で特にオイルラインは経路が入り組みまくっています。オイルは劣化したり熱が加わるとスラッジとなってしまい、そこらにこびりつきます。そこに新しいオイルを流し込んだらどうなるでしょうか?スラッジが剥がれて詰まってしまうとオイルラインが詰まります。人間で言えば心筋梗塞か脳梗塞状態になります。オイルが劣化する前に交換すればスラッジの量も減り汚れで詰まる可能性が減る=交換しても問題が起きる可能性が低いので、ディーラーでも交換してもらえる訳です。実際、この車両も12万kmの車検時にディーラーでATF交換の相談をしましたが、それはもうご丁寧に断られました(笑) 「責任が持てませんので」と。新車で買っても保証が切れたら所詮こんな扱いです。暗にそろそろ新車を…と勧められました。

で、ATF交換ですが、トラブルが起きていた時代から研究が進み、過走行車でも問題が“起きにくい”交換用機材が開発されています。圧送方式や段階交換方式です。圧送方式と言っても加圧して送る訳ではありません。オイルが通るライン(冷却用経路)に注入・排出用のアダプターを割り込ませて、エンジンを掛けた状態で交換していきます。人工透析に近いです。ATFポンプが動いてオイルをゆっくり循環させ、そこから廃油を抜き取っていきます。で、その抜き取ったATFと同容量を注入側から送る訳です。これでコンピューターは減ったと認識せずに騙せます。よく考えますよね。で、段階交換方式は一気に全て変えずに1/3程度ずつ交換していく方式です。少しずつ新しくなっていくので、問題が出にくい訳ですね。但し新しいATFが少しずつ汚れを回収していくので毎回フィルター交換をする必要があるようです。BMWはこのフィルターとオイルパン(ストレーナーといいます)が一体化されている為、後者は使えません。

このATFの交換。トラブルが出るか出ないかは賭けです。ただトラブルが出る車両は遅かれ早かれトラブルが発生すると思います。というのもスラッジが発生している状況で元々詰まりかけている訳です。その状態でATFを交換すると、その洗浄力や粘度の回復でスラッジ剥がれてしまう可能性があり、それによって詰まる訳です。かと言ってそれを放置すれば良いかと言えば、そうではありません。勿論スラッジの爆弾は抱えたままですし、ATFの劣化により真っ先に燃費に影響が出ます。その理由ですが、ATの仕組みをかなり雑に説明します。扇風機の前に風車を置きます。扇風機を動かせば風が風車を回します。これは空気の流れが風車に伝わる為です。これを車に置き換えると、扇風機はエンジン、風車はギア、空気がオイルです。エンジンが作り出した動力がオイルを伝わってギアに届く訳です。このオイルの粘度が落ちたらどうでしょうか?粘らないという事はギアを回す能力も当然下がります。つまり動力が伝わらない為、燃費が落ちる訳です。また、このオイルはマニュアル車の半クラにあたる行為を担います。粘度がなければ半クラ状態が維持できない為、エンストしたりシフトが変わる度にショックが起こります。ATFはラインの洗浄による汚れや熱による劣化は避けられません。結局ATFは新しく、かつ粘度が保たれた方がいいに決まっている訳です。

となると、あとは壊れるリスクを負えるかどうかだけの話です。自分は距離的にも壊れたら買い換える口実にするという前提で交換を依頼しました。過走行車の交換は専門店ないし(受けてくれるのであれば)ディーラーで行う事をお勧めします。大型量販店は避けるべきでしょう。やはり同車種の経験が豊富という事は、それだけトラブルを避けられるノウハウも貯まっているからです。これも人間の治療を考えれば当たり前の話です。但し、専門と謳っているにも関わらず技術力が非常に低いぼったくりショップも多数存在します。情報収集は怠らないようにしましょう。

さて、ストレーナーを外した所です。右側の丸い所は、マグネットです。AT内部から出た鉄粉をここで取ってくれるのですが…見事に溜まっていました。ここで最初の方に書いた「ディーラーが交換していない」と判明した訳です。走行距離と鉄粉量は経験則でだいたい判るので、交換して頂いたスタッフさん曰く「これはストレーナー交換してないと思います。ATFだけ変えてリセットしたんじゃないですかね」と。結局、このストレーナーは13.8万kmも走っていた訳です。(本当にあのク●ディーラーは!!)

上の方にペットボトルに入ったATFがあります。8万km(もしATFすら交換していなければ13.8万km)走行したATFは、本当に真っ黒でシャバシャバでした。純正ATFは鮮やかな琥珀色だったはずです。車両から出てきたコレは、漆黒…寧ろどす黒く得体の知れない液体と化していました。これだけ粘度が落ちていたら、間違いなく動力は失われていたと思います。シフトショックは全くありませんし違和感はほぼ無かったのですが、高回転時(5000rpm以上)のシフトチェンジがなかなか行われなかったり、気にはなっていたのです。

交換した直後、お店から出てアクセルを少し踏み込んだ瞬間に体感できました。間違い無くトルクが上がっています。トルク曲線グラフが全ての領域で上がっている感覚です。自分がコレに乗る時は、ほぼDレンジを使わずマニュアルモードで走っているのでシフトショックを感じる事はまずありませんでしたが、それでもアクセルの”ツキ”が全く違います。よりリニアになったというべきでしょうか。スロットルコントローラーを入れてノーマルからスポーツにした位の差があります。この車両にはPivotのスロコンが入っていますが、NormalからSP4に変えた位の差がありました。まだ燃費は計りきれていませんが、現時点で今までより 0.5km/L 程伸びています。勿論走行条件や気候で変わるので、燃費は指針でしかありませんが、体感については同乗者ですら判るレベルで変化がありました。

結論から言えば、ATFは定期交換すべき!だと思います。頻度ですが車両によってもまちまちですし、ハイパワー車は熱量も上がるのでより短い方が良いでしょう。これは個人的な見解なので、保証は全くできませんが3~4年に1度、もしくは3~4万kmに1度交換すれば良いのでは無いかと思います。日産は確か推奨4万km、トヨタは推奨10万kmだったと思いますが、長く乗りたいのであれば3~4万kmが目安かなと思いました。間違いなく、今回の8万kmはやりすぎです(笑) もし中古で5万km程度の車両を購入したなら、同時に交換すれば良いでしょう。勿論、自己責任で交換を依頼してください。ここに書いたのは自分の経験則による目安なので、これが正しいとかこれで良いという事はありません。そして、交換したらトラブルが起きる可能性も十分あります。全ての車は同じ状態では無いからです。

昔と違って、機械は壊れなくなりました。製造の精度も段違いですし、先人たちの知恵により壊れる場所の特定と対策が繰り返されてきた結果だと思います。ただ、それも定期的な検査を受けて、初めてその恩威が受けられるのではないでしょうか。ATが壊れて交換するとン十万。ATFの交換なら数万。どちらを選びますか?

最近の車ならしっかりメンテする事で20万km位なら余裕で走れるでしょう。ちなみにこの13.8万kmの欧州車。欧州車は壊れる壊れると言われていますが、現在至って快調です。ショップで試験走行されたスタッフさんも驚く位、エンジンがよく回って快調だと太鼓判を頂きました。勿論定期点検は欠かしません。尚、ATF&ストレーナー交換は、日本車のATF交換費用の大凡2倍程度の金額でした。ご参考までに。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください